Tetra Logic Studio|テトラロジックスタジオ

建築・舞台芸術・映像を中心に新しい創造環境を生み出すプラットフォームとして結成。プロジェクトに応じて、組織内外の柔軟なネットワークを構築し活動を展開。

後ろに何かを ―アルマイトの栞 vol.165

友人からのメールの追伸に「Amazonに注文した諸星大二郎3冊が届かない!」と、唐突に書いてあり、そんなことを自分に訴えられても困るが、「もしや『妖怪ハンター 天の巻』『妖怪ハンター 地の巻』『妖怪ハンター 水の巻』の3冊?」と返信したら、「大正解!」と驚かれ、しかし自分の所有する3冊を送る責務は無く、せめて待ち侘びる友人の代わりにと思い、『天の巻』を再読した。この3冊のうち、『天の巻』が最も奇書だ。本編の漫画が全て終わった巻末に「附」と題して二つの論文が掲載され、それは評論家による解説とかではなく、本編の主人公の考古学者が著した史学論文である。諸星大二郎さんが指導教員なのか?。

それぞれの論文の表題は『附(一)「瓜子姫の死」(稗田礼二郎「木を巡る対立」より抜粋)』『附(二)「天の若日子と生命の木」(稗田礼二郎「天孫降臨」より抜粋)』で、どちらも「抜粋」と明記されているからには、さらに長大な本論が存在するはずだが、なんにせよ、漫画の巻末に本編を補う目的で主人公の著した論文が掲載される不可思議さである。それならば、学術論文の巻末に「附」と題して、本論を補足する漫画を掲載しても好いのではないかと思うものの、査読者から「ラストシーンの展開は更に工夫をされるのが宜しいかと考えます」などと突っ込みを入れた審査評が戻って来たらヤッカイだし、「他誌へ投稿してください」だったら、自暴自棄にもなりかねない。

別の方面の事柄に「附」を加える策略を巡らせたほうが好さそうだ。目下のところ、すぐさま思い浮かぶのは、動画公開を始めた舞踏家の細田麻央さん『galacta』シリーズで、これから公開していくシリーズ動画の中に「附」と題して何か加えてみようか。間違っても「特典映像」ではない。「附」だ。『妖怪ハンター 天の巻』を手本にするなら、エンドロールが流れ終わった後に、「附」と文字が現れ、細田麻央さんの著述した何かがテロップとして流れるわけだが、その「何か」が難題で、麻央さんが舞踏論でも書き溜めていればともかく、その可能性は低く、かと云って、断りもなく出し抜けに「ダンスはうまく踊れない」とか書き始めたら、盗用であるうえに、動画の視聴者を困惑させる。

『妖怪ハンター 天の巻』に附された二編の論文は、それ自体が挑戦的な内容で、謎めいてもいる。その点を見ならおう。それで思い出したのは、MAOダンス・スタジオのWCに貼ってあった文言で、麻央さんの6歳になる娘さんが4歳の頃に書いて貼ったと聞いた。表題は『トイレの7つのいましめ』。「いましめ」は「戒め」らしいが、4歳児が「戒め」を著す時点で、謎だ。そのうえ、そこに書かれた平仮名の「す」が、全て確実に左右逆の鏡文字で、これは平仮名に対する挑戦でもある。動画の最後に『附「トイレの7つのいましめ」より抜粋』として、左右逆の「す」を大量に表示すればダダイズム芸術っぽいが、21世紀に、イイのか?。そもそも本編の舞踏より強烈な印象の「附」はマズイだろう。

雑記 | comments (0) | trackbacks (0) | このエントリーを含むはてなブックマーク

Comments

Comment Form

Trackbacks