Tetra Logic Studio|テトラロジックスタジオ

建築・舞台芸術・映像を中心に新しい創造環境を生み出すプラットフォームとして結成。プロジェクトに応じて、組織内外の柔軟なネットワークを構築し活動を展開。

漫画の妄想 ―アルマイトの栞 vol.116

2012年もTetra Logic Studioを宜しくお願いします。そして自分は年末に風邪をひき、半・寝正月だった。中途半端に外出して風邪をこじらせては寝込んだ。寝込んで、江戸川乱歩の『パノラマ島綺譚』や『芋虫』を読み耽っていた。風邪で寝込んだときに読む本としてはいかがなものかと、自分で思う。どちらの作品も、エンターブレインから出版されている丸尾末広さん脚色・作画の漫画版だ。ただでさえ耽美な原作だが、丸尾末広さんがそれを絵にすると、「耽美」の度合いも尋常ではなくなる。画集を眺めるように一コマ一コマに見入り、細部まで観察してしまう。「丸尾さんは一コマ描くのに何時間を費やしているのか」などと、どうでもいいことが無闇に気になったりする。

丸尾版『パノラマ島綺譚』も『芋虫』も、「作画」に見惚れ続けてきたが、今さらながら「脚色」も、ただごとではない気がした。とくに、『芋虫』の脚色についてだ。乱歩の『芋虫』は新潮文庫『江戸川乱歩傑作選』所収の短編の一つで、たった30ページの、ホントに極めて短い作品である。その一方で、丸尾版『芋虫』はA5版で140ページに膨らんでいる。小説を原作として漫画化すると、ページ数の増えることは理解できる。ただ、丸尾版『芋虫』の場合、丸尾さんが随所にさり気なく加えたオリジナルの挿話場面を読んで、乱歩の原作にも同じシーンが在ったと錯覚してしまう。何度読んでも、錯覚する。奇妙だ。たいてい、「このシーンは漫画家が付け加えちゃったんだな」と思うものである。

そうやって乱歩の原作と丸尾末広作画の漫画版を読み比べていたら、「誰か半村良さんの作品を漫画にしてくれないか」と、唐突な考えが浮かんだ。半村良オフィシャルサイトオフィシャルTwitterを手掛け始めて一年が過ぎ、何か新しい企てを付け加えたい気分にもなっているわけで、ふと「漫画化」と云うコトバが現れた。すでに『戦国自衛隊』はコミック版があり、他にも松本零士さんによる『妖星伝』など、漫画化された半村作品はいくつか存在する。それでもなお、「漫画化」と考えてしまったのは、半村さんの代表作の一つである伝奇小説『石の血脈』を、丸尾末広さんの脚色・作画で読んでみたいと勝手な妄想を抱いたからだ。

では、他の半村作品は誰の作画による漫画で読みたいかと、さらに勝手な思考が進んだ。吉田戦車さんに『となりの宇宙人』を描いてもらったら、原作の持つコメディータッチな雰囲気が強まるように思うものの、ともすれば、物語が不条理なギャグ漫画に変貌する可能性も高い。どんな作風になるか見当も付かない点では、さいとう・たかをさん脚色・作画の『産霊山秘録(むすびのやまひろく)』はどうだろうか。登場人物の誰か一人はゴルゴ13に似ている気がする。そんなことに思いを巡らせているうちに、「自分で描いてみようか」などと奇態な考えまで浮かんだが、何にせよ、全ては風邪で熱に浮かされたアタマの中を駆け巡った誇大妄想に過ぎない。

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