Tetra Logic Studio|テトラロジックスタジオ

建築・舞台芸術・映像を中心に新しい創造環境を生み出すプラットフォームとして結成。プロジェクトに応じて、組織内外の柔軟なネットワークを構築し活動を展開。

再生に捕まる ―アルマイトの栞 vol.115

どう云うわけか、やたらとDVDを手渡されている。その大半は、映像作家のOさんから渡されたもので、Oさんが付き合ってくれている仕事で撮影してもらった映像だ。舞台公演の記録映像もあれば、インタビュー取材の映像もあり、半村良さんの作品に登場する場所を二人で歩いてみた際の映像もある。いつの間にか机の上でDVDが増殖していた。Oさんと会うたびに増える。これから編集作業を進めていく映像ばかりで、と云うことは、きちんとチェックしながら観ないといけないわけだ。観るスピードが追い付かない。Oさんがコッソリと「遊び心」エフェクトを映像中に仕掛ける人だと気付いた時、「早送りするな」とOさんに耳許で囁かれた思いがした。

映像であれ音であれ、「再生」を伴うものを作る行為は、その再生時間に何度も付き合う作業となる。当たり前だ。今年2月の『すみだフリオコシ』では、Oさんが映像を担当してくれ、友人のタニモト・タクが音楽を担当してくれたが、本番直前の追い込み編集はOさんと二人で作業した。エンディングの2分ほどのシーンを何度も修正して、やっと二人で「このタイミングだ」と納得したら、三時間が過ぎていた。1秒を30個に分割したヤツは誰なんだ。いま自分の手許に溜まりつつある映像についても、来月辺りには「2分の世界で三時間過ごす」ような事態になりかねないわけで、その事態に備えるためには、ともかく目の前のDVDを次々に観ていくほかないのである。

そんなところへ、二年ぶりくらいに会った悪友からUSBメモリーを一つ渡された。「会わなかった間に作った曲が入ってるから」と云われ、自分も気軽に「感想は、あとでメールで」と答えたのだった。帰宅してMacにUSBを差してみたら、曲数がただごとではない。テーマ毎に「アルバム」の体裁になっていて、そのアルバム数は全部で19だった。どのアルバムにもシッカリした曲数が収録されている。「19枚組コンピレーション・アルバム・ボックス」だ。そんなものは買ったことがない。『HISTORY 筒美京平』の8枚組アルバムが、自分で買ったボックスの最多枚数である。この8枚組ですら、聴き終えるのに一週間くらいはかかった。19枚組はどんなことになるのか。

そしてOさんから渡され続ける編集前のDVDが溜まる一方で、やはり仕事として観なければならない映像作品のDVDも現れ、それら全てを早送りせずに観続けたら、「仕事をしている」と云うより、「引き籠もってDVD鑑賞」としか呼べない状況になる。レンタル店で次から次へと映画を借りては鑑賞することに明け暮れていた友人が、「俺、ビデオのリモコンを握ったまま最期を迎えたい」と、よく判らないことを口癖にしていた。それはそれで、なにかしらロマンチックな死に様でステキな気もするが、再生中の映画が『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』だったりすると、後々まで物笑いの語り草にされはしないか。つまり、自分が気を付けなければいけない。

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