Tetra Logic Studio|テトラロジックスタジオ

建築・舞台芸術・映像を中心に新しい創造環境を生み出すプラットフォームとして結成。プロジェクトに応じて、組織内外の柔軟なネットワークを構築し活動を展開。

町工場迷路 ―アルマイトの栞 vol.92

昨年の秋から取り組んでいる町工場企画『すみだフリオコシ』は2月11日(金)の祝日に本番です。詳しくは公式サイトを御覧ください。「本番」と表現しても映像がメインとなるので、むしろ「上映会」と書くべきではないかとも思うが、鈴木一琥さんがその場で少しは踊る予定だから、一応「本番」である。会場は浜野製作所と云う町工場で、写真のとおり建物がやたらに目立つのでわかりやすいが、そこに至る道がどうにも不安である。少なくとも自分が、未だに単独で最寄りの八広駅から辿り着けるか怪しい。下町は、どうにも迷路である。

自分が酷い方向音痴であることにも原因はあるが、なにやら訝しい気分になるのは、一緒に歩いている鈴木一琥さんなどの地元の人がこの界隈の道に迷うことだ。撮影のために浜野製作所と、もう一つのロケ地である岩井金属金型製作所を何度も訪れ、一方での撮影が終わってもう一方へ移動する際、地元住民である筈の一琥さんが毎回のように「あれ。この道じゃなかったかも」などと口にし、そしてどうやらその度に異なる道を歩いていたらしい。そんな状況の中で、ただ付いて歩いているだけの自分も悪いが、とは云え、下町は迷路である。

撮影が済んでしまった今にして思うのだが、この迷路の様子も撮影しておけば好かった。道に迷っているそのままを撮りっぱなしにしても好かったんじゃないか。それもまた、町工場の現実の姿を表す映像になる筈である。メディアを通して何かしらそれなりに知っているつもりの「町工場」のことを、実のところ自分のような者が殆ど知らないと云うことまで、そこにはありありと映し出される筈だ。なにせ、工場の在るその町並みの見分けすら付かず、道も憶えられない始末である。過去に多く作られた虚構の中の「町工場像」を思い描いて入り込めば、途端に迷子にもなろうと云うものだ。

昨年の秋から何度も撮影に出向いておきながら、今以て現場に酷く不案内な自分が居る。本番当日の会場仕込み図を描く前に、会場の近隣地図でも描いたほうが好いのではないか。住宅地図なみの精度で近隣を描けば、もう少しマシな町並みの把握が出来そうなものである。しかし、描いてみたらやはり迷路になってたりはしないか。地図は、その土地を「読み解く」ことが出来て初めてマトモに「図」として描けるものだ。その土地を理解していない者が描けば、それはたいてい「迷路」になる。会場で観客に町工場迷路を配布しようか。「さて、ここはどこかな?」。正解しなければ、帰ってはいけない。

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